労働環境と待遇改善

介護士の労働環境と待遇改善について、現状と課題を整理する。介護業界では人材不足が深刻化する中、労働条件の改善が急務となっている。2024年6月から実施された介護職員等処遇改善加算により、介護職員一人当たり月額平均6,000円程度の賃上げが行われた。しかし、他業種との給与格差は依然として存在し、根本的な解決には至っていない。労働時間面では、多くの施設で2交代制の夜勤が実施されており、16時間にも及ぶ長時間労働が常態化している現実がある。

労働環境の改善には、適正な人員配置と労働時間管理が不可欠である。日本医労連の調査によると、9割の介護施設で2交替制の夜勤を実施しており、職員1人で対応する「ワンオペ夜勤」も問題視されている。休憩時間も十分に確保されず、持ち帰り残業が当たり前になっている職場も多い。訪問介護では、利用者宅間の移動時間が勤務時間に含まれないケースもあり、実際の労働時間と給与が見合わない状況が続いている。

福利厚生の充実も重要な課題だ。有給休暇の取得率は施設によって大きく差があり、全国平均の65.3%を下回る職場も少なくない。一方で、積極的に働きやすい環境を整備している施設では、80%を超える取得率を実現している例もある。介護職員実務者研修の受講費用補助や資格取得支援制度を設ける事業所も増えており、キャリアアップを支援する取り組みが広がっている。介護業界全体の待遇改善には、国の政策だけでなく、各事業所の積極的な取り組みが求められる。